結論:2025年度(2026年3月期)の国内公募社債(普通社債、自社債を含む)の発行総額は前年度比4.5%増の15兆8632億円で、1990年度以降で最も多くなりました。これは機関投資家生命保険会社・銀行・年金基金など、大量の資金を運用するプロの投資家のことです。債券市場の売買の大部分を占めます。向けを含む社債市場全体の数字で、発行体債券を発行してお金を借りる企業・政府・機関のことです。債券投資は「発行体にお金を貸す」ことにあたります。別ではソフトバンクグループ(以下SBG)が首位でしたが、「過去最高=SBG一社の効果」と単純化はできません。個人向け社債に限ると2025年度の発行額は約2兆7000億円で、こちらも過去最高です。当サイトが2020年以降の条件決定投資家の需要を見ながら、仮条件の範囲内で実際の利率などが確定することです。分を集めた発行履歴データで発行体別に集計すると、SBGの個人向け社債シェアは2021年67.9%→2023年10.4%→2024年54.2%→2025年43.6%→2026年(1〜9月)56.6%(条件決定日ベースの暦年集計)と年によって大きく振れており、「年々SBG依存度が高まっている」という単調な傾向ではありませんでした。むしろ非SBGの発行体数は2020年の13社から2025年は34社まで増え、裾野自体も広がっています。そのうえで、2026年9月に条件決定したSBG第70回無担保社債(発行総額1兆円)は、当サイトDB(2020年以降)で最大の個人向け社債の単独発行で、SBG自身の過去最大(6000億円)の1.67倍、SBG以外の最大(楽天グループの2500億円)の4倍に相当します。
「発行額15兆円・6年ぶり最高」は何の数字か
日本経済新聞などが報じた「社債発行15兆円・6年ぶり最高」は、国内で発行された公募の普通社債(発行体の自社債を含み、機関投資家向けも個人投資家向けも合算した数字)の発行総額です。2025年度(2026年3月期)は前年度比4.5%増の15兆8632億円で、比較可能な1990年度以降で最多になりました。発行体別ではSBGが首位、引受証券会社が発行体から債券をいったん買い取り、投資家に販売することです。引き受ける証券会社の集まりを引受団と呼びます。(主幹事発行条件を発行体と一緒に決め、販売の中心を担う証券会社です。割当額が大きいため、その証券会社では買いやすい傾向があります。 詳しく見る →)のリーグテーブルではみずほ証券が首位だったと報じられています。
この15兆8632億円は機関投資家向けを含む全体の数字であり、個人向け社債だけの数字ではありません。個人向け社債は別枠で集計されており、大和総研のレポートによれば2025年度の個人向け社債発行額は約2兆7000億円で、こちらも過去最高を更新しました。以下では当サイトが集計している個人向け社債のデータで、この個人向け市場の中でSBGがどれだけを占めているかを見ていきます。
当サイトDBで見る、SBGと非SBGの年別発行額
当サイトの発行履歴データ(条件決定日ベース、発行額が判明している銘柄のみ)から、発行体を「SBG(ソフトバンクグループ)」と「それ以外」に分けて暦年で集計しました。SBGには本体の無担保普通社債と劣後債発行体が破綻したとき、弁済の順位が普通の債券より後回しになる債券です。その分だけ利回りが高く設定されます。 詳しく見る →をまとめて含めています。なお同じ孫グループでも通信子会社の「ソフトバンク(9434)」はSBGとは別法人のため、非SBG側に含めています。2026年は第70回の条件決定日(9月4日)までの1〜9月分です。
| 年 | SBG発行額 | 非SBG発行額 | 合計 | SBGシェア | 非SBG発行体数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2020年 | 0億円 | 5,252億円 | 5,252億円 | 0.0% | 13社 |
| 2021年 | 8,550億円 | 4,037億円 | 12,587億円 | 67.9% | 14社 |
| 2022年 | 3,850億円 | 11,931億円 | 15,781億円 | 24.4% | 23社 |
| 2023年 | 2,220億円 | 19,050億円 | 21,270億円 | 10.4% | 28社 |
| 2024年 | 14,500億円 | 12,267億円 | 26,767億円 | 54.2% | 33社 |
| 2025年 | 11,000億円 | 14,207億円 | 25,207億円 | 43.6% | 34社 |
| 2026年(1〜9月) | 16,780億円 | 12,880億円 | 29,660億円 | 56.6% | 29社 |
| 7年計 | 56,900億円 | 79,624億円 | 136,524億円 | 41.7% | — |
※条件決定日ベースの暦年集計です。発行額が「-」で不明な銘柄(2023〜2025年に計5本)は合計に含めていません。当サイトDBの2025年計(暦年、2兆5,207億円)は大和総研が示す2025年度(2026年3月期、2兆7,000億円)とおおむね近い水準で、当サイトが個人向け社債市場の大部分を捕捉できていると考えられます。
2026年は9月4日の第70回までで合計2兆9,660億円に達し、9カ月の時点で過去最高だった2024年(2兆6,767億円)と2025年(2兆5,207億円)の年間実績を上回りました。内訳はSBGが3本(4月の劣後債4,180億円、6月の劣後債2,600億円、9月の第70回1兆円)で1兆6,780億円、シェア56.6%。非SBGは29社・46本で1兆2,880億円と、こちらも9カ月で2025年通年(1兆4,207億円)の9割に達しています。非SBGの大口はSBIホールディングス2本(3,300億円)、三菱UFJフィナンシャル・グループの劣後債2本(2,270億円)、みずほフィナンシャルグループの劣後債2本(1,805億円)、ルノー(1,000億円)、光通信(910億円)、イオン(700億円)で、メガバンク劣後債とSBIホールディングスが非SBGの半分近くを占めます。SBGの1兆円が2026年を押し上げているのは確かですが、SBGを除いても2026年は2025年並みかそれ以上の年になる見込みです。
シェアは年々上がっているわけではない——2023年はわずか1割
表を見ると、SBGの個人向け社債シェアは一本調子で拡大してきたわけではないことがわかります。SBGが個人向け社債を出し始めたのは2021年6月の35年劣後債(2021年に2本、合計8550億円)からで、この年はシェア67.9%まで一気に上がりました。ところが2022年は24.4%、2023年は10.4%まで下がっています。2023年は個人向け社債全体が2兆1270億円と前年より伸びた年でしたが、その伸びを担ったのはSMFGやみずほFGの劣後債、大和証券グループ本社、楽天グループなど非SBGの発行体で、SBGの発行(35年劣後債1本、2220億円)はむしろ縮小していました。
2024年に入ると、SBGは無担保普通社債を1年間で3本(59回・63回・64回、いずれも3500億〜5500億円)発行し、シェアは54.2%まで戻ります。2025年も65回・67回の2本(合計1兆1000億円)を出しましたが、非SBGの発行額も1兆4207億円まで積み上がったため、シェアは43.6%に落ち着きました。2026年は9月までにSBGが3本・1兆6,780億円を出してシェアは56.6%と再び5割を超えています。「SBGが個人向け社債を大量に出した年はシェアが上がり、出さなかった年は非SBGの伸びの方が目立つ」という、SBGの発行動向そのものに左右される構造が見えます。
非SBGの発行体も同時に増えている
SBGのシェアが振れる一方で、非SBGの発行体数(当サイトDBで条件決定を確認できた社数)は2020年の13社から2025年は34社まで、6年で2.6倍に増えています。2020〜2021年は電力各社・メガバンク劣後債・あかつき本社など顔ぶれが限られていましたが、2022年以降はSBIホールディングス、光通信、クレディセゾン、近鉄グループホールディングスなど毎年のように新しい発行体が加わり、2024〜2025年にはひろぎんホールディングス、SMFL(三井住友ファイナンス&リース)、ちゅうぎんフィナンシャルグループ、PWホールディングスといった地銀系・リース系・サービス業の発行体も登場しています。アイザワ証券グループのように毎月に近い頻度で小口(8億〜15億円)を発行し続ける発行体も定着しました。
つまり2025年度の個人向け社債「過去最高」は、SBGという一発行体の大型発行と、非SBGの発行体数・発行額の裾野拡大という、2つの動きが重なって生まれた記録です。どちらか一方だけでは説明がつきません。ただしSBGの1回あたりの発行額は2200億〜1兆円と非SBGの平均的な発行額(数十億〜数百億円が中心)より一桁大きく、SBGが出す年と出さない年とで市場全体の伸び方が大きく変わる、ボラティリティ価格変動の激しさのことです。オプションの価値を決める最大の要素で、仕組債のクーポンの源泉でもあります。の高い牽引役であることは変わりません。
第70回(1兆円)は当サイトDB史上最大の単独発行
2026年9月4日に条件決定したSBG第70回無担保社債(愛称「福岡ソフトバンクホークスボンド」)は、発行総額1兆円、年限7年、利率年4.75%、格付けR&IやJCRなどの第三者機関が、発行体の「約束どおり支払う力」を記号で評価したものです。AAAが最上位で、個人向け社債はA格前後が中心です。 詳しく見る →A(日本格付研究所)です。申込期間は2026年9月7日〜16日、払込期日は2026年9月17日、償還満期を迎えて、額面のお金が投資家に払い戻されることです。期限は2033年9月16日で、資金使途は国内社債の償還資金およびABBロボティクス事業の買収資金の一部に充当するとされています。
この1兆円という規模を、当サイトDB上の過去の発行と比べると次のようになります。
| 比較対象 | 発行額 | 第70回との倍率 |
|---|---|---|
| SBG第70回(2026年9月、今回) | 1兆円 | — |
| SBGの過去最大(65回、2025年4月) | 6,000億円 | 1.67倍 |
| SBGの2021〜2025年の平均(9本) | 4,458億円 | 2.24倍 |
| SBG以外の最大(楽天グループ22回、2023年1月) | 2,500億円 | 4.0倍 |
SBGは2021〜2025年に個人向け社債を9本発行し(2026年にも劣後債を2本、4月に4,180億円、6月に2,600億円)、1本あたりの平均は4458億円、過去最大でも6000億円でした。今回の1兆円はその平均の2.24倍、過去最大の1.67倍にあたり、当サイトDB(2020年以降)に収録されている個人向け社債の中で最大の単独発行です。参考までにSBG以外で最大だった楽天グループの2023年1月債(2500億円)と比べると4倍の規模になります。
格上げとともに上乗せはやや縮小傾向
SBGが個人向け社債で大きなロットを出せるようになった背景には、格付けの上昇があります。2021年6月・9月の劣後債はBBB(J)・BBB+(J)でしたが、2022年12月の58回債でA-(J)、2024年5月の63回債以降はA(J)が続いています。同年限の国債利回りに対する上乗せ(スプレッド国債など基準となる金利への「上乗せ幅」のことです。発行体の信用リスクと流動性の対価で、社債の値段の本体といえます。 詳しく見る →)は、格付けが上がった後も概ね年+2.3〜+2.6%のレンジで推移しており、金利上昇局面でも大きくは縮んでいません。
| 条件決定日 | 回号 | 年限 | 発行額 | 利率 | 同年限国債 | 上乗せ | 格付け(JCR) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2021-06-03 | 劣後5(劣後債) | 35NC5 | 4,050億円 | 2.750% | 0.720% | +2.03% | BBB |
| 2021-09-10 | 劣後3(劣後債) | 7年 | 4,500億円 | 2.40% | -0.081% | +2.48% | BBB+ |
| 2022-12-01 | 58回(普通) | 7年 | 3,850億円 | 2.84% | 0.191% | +2.65% | A- |
| 2023-04-14 | 劣後6(劣後債) | 35NC5 | 2,220億円 | 4.750% | 1.433% | +3.32% | BBB |
| 2024-03-01 | 59回(普通) | 7年 | 5,500億円 | 3.04% | 0.446% | +2.59% | A- |
| 2024-05-31 | 63回(普通) | 7年 | 5,500億円 | 3.03% | 0.774% | +2.26% | A |
| 2024-11-27 | 64回(普通) | 7年 | 3,500億円 | 3.15% | 0.793% | +2.36% | A |
| 2025-04-18 | 65回(普通) | 5年 | 6,000億円 | 3.34% | 0.844% | +2.50% | A |
| 2025-11-26 | 67回(普通) | 7年 | 5,000億円 | 3.98% | 1.538% | +2.44% | A |
| 2026-09-04 | 70回(普通) | 7年 | 1兆円 | 4.75% | 2.493% | +2.26% | A |
劣後債(劣後5・劣後3・劣後6)は無担保普通社債より格付けが1〜2ノッチ低く、上乗せも普通社債より大きくなっています。一方、普通社債(58回以降)に限ると上乗せは+2.26〜+2.65%のレンジに収まっており、今回の70回(+2.26%)は過去の普通社債の中でもむしろ低い水準です。利率4.75%という数字だけを見ると高く感じますが、これは同年限国債の利回り自体が2022年の0.19%から2026年9月の2.49%まで上昇したためで、SBGの信用上乗せ幅そのものが拡大したわけではありません。
まとめ
- 2025年度の社債発行15兆8632億円は機関投資家向けを含む全体の数字で、個人向け社債は別枠(約2兆7000億円、こちらも過去最高)
- 当サイトDBでの個人向け社債に限ると、SBGのシェアは2021年67.9%→2023年10.4%→2025年43.6%→2026年(1〜9月)56.6%と年によって大きく振れ、単調にSBG依存が強まっているわけではない
- 非SBGの発行体数は2020年の13社から2025年は34社に増えており、裾野の拡大も同時に起きている
- 2026年9月のSBG第70回(1兆円)は当サイトDB史上最大の単独発行で、SBG自身の過去最大の1.67倍。上乗せ幅は+2.26%と過去のSBG普通社債の中でも低めで、利率の高さは国債利回り上昇が主因
SBGが個人向け社債を出す年は市場全体の発行額を大きく押し上げ、出さない、あるいは小口にとどめる年は非SBGの発行体数の多さが目立つ、という構造が当サイトDBからは読み取れます。次回以降の個人向け社債市場の規模を見るときは、SBGの発行予定の有無を1つの目安にしつつ、非SBGの発行体数がどれだけ積み上がっているかもあわせて確認すると、市場全体の実力がつかみやすくなります。
関連: 社債の格付けとは / クレジット・スプレッド分析 / 社債の「発行額」を見る意味 / 個人向け社債の発行履歴一覧 / ソフトバンクグループの社債一覧
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の勧誘ではありません。条件はソフトバンクグループ株式会社のプレスリリース(2026年8月24日・9月4日)、日本経済新聞、大和総研のレポート等の公表資料に基づきます。
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