社債の「コール(期限前償還)」とは?——10NC5の読み方と、5年で返ってくる前提の注意点

社債の「コール(期限前償還)」とは?——10NC5の読み方と、5年で返ってくる前提の注意点 【初心者向け】社債の基礎知識

結論:コール付き社債とは、発行体債券を発行してお金を借りる企業・政府・機関のことです。債券投資は「発行体にお金を貸す」ことにあたります。が満期より前に額面債券の券面上の金額で、満期に払い戻される基準です。債券価格は「額面100あたり」で表されます。で償還満期を迎えて、額面のお金が投資家に払い戻されることです。できる権利(コール=期限前償還満期より前に、発行体が債券を額面などで償還できる条項のことです。劣後債では「最初のコール日に償還するのが慣行」ですが、義務ではありません。 詳しく見る →条項)が付いた社債です。「10NC5」と書かれていれば最短5年・最長10年の社債という意味です。国内で個人向けに販売される円建ての劣後債発行体が破綻したとき、弁済の順位が普通の債券より後回しになる債券です。その分だけ利回りが高く設定されます。 詳しく見る →では初回コール日に償還されるのが通例ですが、約束ではありません。そのため、資金計画は「最短で初回コール日、最長で満期」の両方で立てておくのが要点です。

社債の「コール付き」とは

コール付き社債(コーラブル債)とは、あらかじめ決めた日以降に、発行体が満期を待たず額面で償還してよい権利が付いた社債です。返すかどうかを決めるのは発行体で、投資家の側から早く返してほしいと求めることはできません。発行体にこの権利を渡す分、同じ発行体・同じ年限の普通の社債よりも利率は相対的に高めに設定されるのが一般的です。

普通の社債コール付き社債
いつ返ってくるか満期日に額面で償還初回コール日以降、発行体が選んだ日に額面で償還(しなければ満期まで)
早く返すかを決める人(決める余地なし)発行体
年限の書き方の例5年、10年10NC5(満期10年・5年後からコール可)
投資家が気をつけること途中で売るなら時価早く返ったときの再投資と、返ってこないときの資金計画

個人向け社債の告知に「期限前償還条項付」「10年(5年後に期限前償還可)」といった文字を見たことはありませんか。これがコールです。劣後債やハイブリッド債債券と資本の中間の性質を持つ証券です。銀行は法規制、保険はソルベンシー、事業会社は格付け上の資本性と、発行の理屈がそれぞれ異なります。 詳しく見る →のほぼすべてに付いていて、この仕組みを知らずに買うと「10年債だと思っていたら5年で返ってきた」「5年で返ってくると思っていたのに返ってこない」という戸惑いにつながります。以下では、コールの基本を順にやさしく整理します。

コールは「発行体の権利」で、返ってくるときは額面

コールのポイントは、「発行体(お金を借りている会社)の権利」であって「投資家の権利」ではないことです。投資家が「返してほしい」と言える仕組みではなく、返すかどうかは発行体が決めます。返ってくるときは額面(100円)で返ってくるので、コールによって元本が減ることはありません。

「10NC5」の読み方

コール付き社債の年限は「10NC5」のように書かれます。読み方は「満期10年、最初の5年はコールなし(Non-Call 5年)、5年経ったらコール可能」。つまり10NC5=最短5年・最長10年の社債です。メガバンクの個人向け劣後債はこの10NC5が定型で、保険会社の劣後債には30NC5や30NC10(満期30年・10年後からコール可)、事業会社のハイブリッド債には35NC5のような長いものもあります。当サイトの発行履歴データベースでは年限欄にこの表記で載せています。

実例:三井住友トラストグループ 第25回劣後債(2026年9月)

  • 満期:10年(2036年9月)。5年後の2031年9月から発行体はコール可能
  • 利率:当初5年は年2.902%で固定
  • コールされなかった場合:6年目以降の利率は「その時の5年国債利回り+0.700%」に見直される(リセット。上乗せ幅は募集時に決まっています)

投資家の多くは、この債券を「5年で2.902%の債券」として買います。それはメガバンク系の劣後債が実務上、初回コール日に償還されるのが通例だからです。ただし約束ではありません。もしコールされなければ、6年目からは見直し後の利率で最長10年持つことになります。

なぜ発行体はわざわざ返すのか

「返さなくてよい権利」なのに、なぜ銀行は5年で返すのか。ざっくり言えば、劣後債を「資本」として数えられる期間に制限があり、5年を過ぎると銀行にとってのうまみが薄れるからです。加えて、「コールしない銀行」という評判が立つと次の劣後債が売れなくなるという事情もあります。この仕組みの正確な中身(資本算入の逓減、銀行・保険・事業会社での違い)はコールはいつ行われるかの中級記事で解説しています。

投資家にとってコールは「損」か「得」か

コールされること自体で損は出ません(額面で返ってきます)。困るのはむしろ次の2つです。

  • 再投資の問題:高い利率の債券が予定より早く終わり、そのお金を当時より低い金利で運用し直すことになる場合があります(金利が下がった局面ほどコールされやすい、という構造でもあります)
  • コールされない問題:5年で戻る前提の資金計画が崩れ、最長で満期まで持つことになります。国内で個人向けに販売される円建ての劣後債では初回コールが信義則のように守られてきており、見送られた例はまだありません(国内大手でも海外向けの外貨建てでは2009年にみずほFGの例があります)。基本はコールされる前提で持ち、「100%ではない」ことだけ頭の片隅に置いておけば十分です。海外の銀行で実際に見送られた実例はコールスキップの記事で扱っています

既発債すでに発行され、市場で流通している債券です。証券会社の在庫から、募集を待たずにいつでも購入できます。 詳しく見る →として買う場合はもう一点。証券会社の画面の利回りが「コールまで」の利回りか「最終償還まで」の利回りかで意味がまったく違います(既発債の読み方)。

買う前の3つの確認

  1. 初回コール日はいつか——「10NC5」なら5年後。資金計画は「最短でその日、最長で満期」の両方で立てる
  2. コールされなかった場合の利率はどう決まるか——目論見書債券の発行条件やリスクを記載した法定の開示書類です。購入前に必ず交付されます。 詳しく見る →の「利率」欄にリセットの計算式(○年国債+○%)が書かれています
  3. その発行体がこれまでコールしてきたか——各発行体ページの履歴表で、過去の劣後債が初回コール日に償還されているかを確認できます

コールの基本はここまでです。劣後債という商品そのものの注意点は劣後債の記事、社債と株式の中間にある証券の全体像はハイブリッド証券の記事、契約条件の読み方は社債要項の記事へ進んでください。

※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の勧誘ではありません。条件は三井住友トラストグループの公表資料に基づきます。

新発の個人向け社債をメールでお知らせ

新しい募集が公表された日・利率が決まった日・募集が始まった日の3回、条件の要点(利率・年限・格付け・募集期間・取扱証券会社)をメールで届けます。人気銘柄は初日に売り切れるので、募集開始の前に備えられます。配信は月に数回。いつでも解除できます。

確認メールをお送りします。メール内のリンクを開くと登録が完了します。

コメント

  1. […] ※コール(期限前償還満期より前に、発行体が債券を額面などで償還できる条項のことです。劣後債では「最初のコール日に償還するのが慣行」ですが、義務ではありません。 詳しく見る →条項)そのものが初めての方は、まずコールの基本(10NC5の読み方・投資家が困る2つの場面)からお読みください。本稿はその一歩先、「なぜ初回コール日に償還満期を迎えて、額面のお金が投資家に払い戻されることです。されるのか」を規制の側から解説します。 […]

  2. […] 社債の利率は「同じ年限の国債利回り+発行体債券を発行してお金を借りる企業・政府・機関のことです。債券投資は「発行体にお金を貸す」ことにあたります。の信用リスクへの上乗せ(スプレッド)」でおおむね決まります(スプレッドの読み方)。ベース金利である国債利回りは日銀の金融政策で大きく動くので、利率の絶対水準だけを時系列で比べても、市場がその発行体をどう見ているかは分かりません。見るべきは条件決定投資家の需要を見ながら、仮条件の範囲内で実際の利率などが確定することです。日のその日の、同じ年限の国債利回りを引いた残りです。本稿では財務省「国債金利情報」の各条件決定日の値を使い、電力債(残存3年の普通社債)は3年国債と、メガバンク劣後債(10年債・初回コール5年)は初回コール日である5年後を基準に5年国債と比較しています。劣後債を最終償還満期を迎えて、額面のお金が投資家に払い戻されることです。年限ではなくコール年限で評価するのは、コールされる前提で市場が値段を付けているためです(コールの読み方)。なお「10.3NC5.3」「10.33NC5.33」のような端数年限は利払い日を半年ごとにそろえるための調整で、初回コールがおよそ5年後である点は変わりません。 […]

  3. […] 確定している普通社債では、修正デュレーションとほぼ同じ値になります。一方、コール条項付きの社債のように発行体債券を発行してお金を借りる企業・政府・機関のことです。債券 […]

  4. […] 年間はコールできない」という意味です。コール条項そのものの読み方は「社債の「コール(期限前償還)」とは?」、コールされなかった場合の扱いは「社債の繰上償還(コール)はいつ起こ […]

  5. […] 額面のお金が投資家に払い戻されることです。できる設計になっています(読み方はコールの入門記事を参照してください)。初回コールまでは固定利率、それ以降は変動利率に切り替 […]

  6. […] 、満期に払い戻される基準です。債券価格は「額面100あたり」で表されます。で償還できる、という設計を表します。読み方の基本はコール(期限前償還)の入門記事で説明しています。 […]

  7. […] 似た言葉と混同しやすいので、2点だけ区別しておきます。1つはコール(期限前償還)との違いです。コールは発行体が「返す」と決める権利で、この条項は社債権者が「返して」と請 […]