利率が高い「劣後債」って何?普通社債との違いと投資する際の注意点

利率が高い「劣後債」って何?普通社債との違いと投資する際の注意点 【超初心者向け】社債の基礎知識

結論:劣後債発行体が破綻したとき、弁済の順位が普通の債券より後回しになる債券です。その分だけ利回りが高く設定されます。 詳しく見る →とは、発行体債券を発行してお金を借りる企業・政府・機関のことです。債券投資は「発行体にお金を貸す」ことにあたります。が倒産したときの返済順位が普通社債より後ろになる社債で、その分だけ利率が高く設定されています。当サイトの実測では、同じ発行体の普通社債との利率差(劣後プレミアムオプションの権利の代金(保険料)のことです。仕組債の高い利率の源泉はこれです。文脈によっては「上乗せ幅」の意味でも使われます。)は0.7〜0.9%程度です。メガバンクの個人向け劣後債には、倒産前でも行政の認定で元本がゼロになる「実質破綻時免除特約」と、5年後の期限前償還満期より前に、発行体が債券を額面などで償還できる条項のことです。劣後債では「最初のコール日に償還するのが慣行」ですが、義務ではありません。 詳しく見る →(コール)が付いているのが定型で、この2つの条項を理解することが劣後債投資の中心です。本稿では劣後の意味、利率が高い理由、投資前に確認する注意点を解説します。


「劣後」とは「順位が劣る」こと

「劣後」とは、文字通り「順位が劣る」という意味です。

何における順位かというと、万が一その社債を発行した企業が経営破綻(倒産)してしまった場合に、お金を返してもらう順番のことです。

会社が倒産すると、残った財産を債権者(お金を貸していた人たち)で分け合うことになりますが、その分配には法律で定められた厳格な優先順位があります。

お金が返ってくる優先順位

  1. 銀行など(担保のある借金)
  2. 普通社債の保有者 ← 私たちが普段目にする多くの社債
  3. 劣後債の保有者 ← ★今回のテーマ
  4. 株式の保有者(株主)

このように、劣後債は普通社債に比べて返済の順位が低く設定されています。そのため、倒産時に会社に残っている財産が少ない場合、普通社債の分までは返済されても、劣後債の分は一部しか返ってこない、あるいは全く返ってこないという可能性が高くなります。


なぜ利率が高いのか?

利率が高い理由は、この「劣後リスク」を引き受けることに対する、投資家へのプレミアム(上乗せ金利)が支払われているからです。

企業側からすれば、普通社債よりも返済順位が低いため、財務的には株式に近い性質を持つ資金調達と見なされるメリットがあります。その代わり、投資家には高いリスクを取ってもらうことになるため、魅力的な高い金利を設定しているのです。


劣後債に投資する際の3つの注意点

高いリターンは魅力的ですが、劣後債に投資する際は、以下の点に注意が必要です。

  1. 発行体の信用力をより厳しくチェックする  普通社債以上に、発行体の倒産リスクが直接的な損失に繋がりやすい商品です。メガバンクや大手保険会社、優良な大手企業など、財務基盤が極めて安定している企業が発行するものに限定して検討するのが賢明です。
  2. 特殊な「トリガー条項」がないか確認する  特に銀行などが発行する劣後債には、「トリガー条項」という特殊な条件が付いていることがあります。これは、倒産する前でも、自己資本比率が一定水準を下回るなどの特定の条件(トリガー)を満たした場合に、強制的に元本が削減されたり、株式に転換されたりするというものです。目論見書債券の発行条件やリスクを記載した法定の開示書類です。購入前に必ず交付されます。 詳しく見る →などで、こうした特殊な条件の有無を必ず確認しましょう。
  3. ポートフォリオ保有している資産の組み合わせ全体のことです。「卵を一つのカゴに盛るな」のカゴの構成にあたります。の一部に留める  劣後債は、資産の大部分を投じるような商品ではありません。リスクを正しく理解した上で、資産全体の一部でハイリスク・ハイリターンを狙う「サテライト」部分として、余裕資金で投資する商品と位置づけましょう。

まとめ

劣後債は、そのリスクを十分に理解し、許容できる投資家にとっては、高いリターンをもたらす魅力的な選択肢となり得ます。しかし、多くの初心者にとっては、まずは格付けR&IやJCRなどの第三者機関が、発行体の「約束どおり支払う力」を記号で評価したものです。AAAが最上位で、個人向け社債はA格前後が中心です。 詳しく見る →の高い「普通社債」から投資を始めるのが安全で、おすすめです。

当サイトの発行履歴データベースでも、劣後債かどうか(回号の「劣」表記)を確認できます。

さらに深く——劣後債の上級記事(読み進め順)

劣後債は「銀行・保険・事業会社」で設計のロジックがまったく違います。本記事で全体像をつかんだら、次の順で読み進めると体系的に理解できます。

  1. ハイブリッド証券とは —— 社債と株式の中間に位置する証券の全体像。まずここで「劣後債はこの地図のどこか」を掴んでから各論へ(中級)
  2. 社債の「コール(期限前償還)」とは? —— 劣後債にほぼ必ず付くコール条項の基本。発行体の権利であること、「10NC5」の読み方、5年で返ってくる前提の注意点(初心者)
  3. 劣後債の繰上償還(コール)はいつ? —— 銀行劣後債(バーゼルIII適格Tier2銀行の自己資本規制で「補完的資本」に算入できる劣後債です。10年満期・5年後コール(10NC5)が典型で、実質破綻時には元本が毀損する条項が付いています。 詳しく見る →)が初回コール日に償還満期を迎えて、額面のお金が投資家に払い戻されることです。される理由。資本算入の逓減という規制の仕組みから解説(中級)
  4. コールが来なかったらどうなるか —— ドイツ銀行・サンタンデール・クレディ・スイスの実例で見るコールスキップとエクステンションリスク(上級)
  5. AT1債の元本削減リスク —— 同じ「銀行の劣後」でも、Tier2劣後債とAT1債銀行の劣後債よりさらに資本に近い永久債です。利払いは銀行の裁量で停止でき、経営危機時には元本が削減されます。2023年のクレディ・スイスでは実際に全損しました。 詳しく見る →(永久・非累積・CET1トリガー)はまったく別物。本記事のトリガー条項の話の本丸(中級)
  6. 「実質破綻時免除特約」とは何か —— 銀行劣後債の元本が倒産しなくてもゼロになる条件。劣後特約との違い、AT1・保険劣後債・TLAC債との損失吸収の比較(上級)
  7. 保険会社の劣後債とソルベンシー・マージン比率 —— 保険劣後は銀行とロジックが違う。ESR(経済価値ベースの資本比率)の実測比較つき(上級)
  8. 事業会社のハイブリッド債 —— ソフトバンクグループ等が出す35年NC5のハイブリッド債債券と資本の中間の性質を持つ証券です。銀行は法規制、保険はソルベンシー、事業会社は格付け上の資本性と、発行の理屈がそれぞれ異なります。 詳しく見る →。規制ではなく格付け会社の資本性評価だけで設計される第三のロジック(上級)
  9. 劣後プレミアムの実測 —— ソフトバンクグループ債で、普通社債と劣後債のスプレッド国債など基準となる金利への「上乗せ幅」のことです。発行体の信用リスクと流動性の対価で、社債の値段の本体といえます。 詳しく見る →差(劣後リスクの値段)を国債利回りベースで実測(上級)
  10. 社債要項の読み方 —— 「劣後特約」「実質破綻時債務免除特約」が目論見書でどう書かれているか。名称から弁済順位を読む方法(上級)

個人向けに劣後債・ハイブリッド債を発行している発行体は、当サイト集計(2020年〜)で10社・49本。中心はメガバンク3社(三菱UFJフィナンシャル・グループ・みずほフィナンシャルグループ・三井住友フィナンシャルグループ)と三井住友トラストグループのバーゼルIII適格Tier2劣後債で、ほかに野村ホールディングス、地銀のちゅうぎんフィナンシャルグループ・山口フィナンシャルグループの劣後債、事業会社ではソフトバンクグループのハイブリッド債があります。各発行体ページでは普通社債と劣後債を分けた履歴表で条件を確認でき、全銘柄は発行履歴データベースの回号「劣」・年限「NC」の表記で見分けられます。

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コメント

  1. […] 行体が破綻したとき、弁済の順位が普通の債券より後回しになる債券です。その分だけ利回りが高く設定されます。 詳しく見る →の銘柄名を読むとき」の3つの場面に分けて並べました。 […]