仕組債オプションなどのデリバティブを債券の形に組み込んだ商品です。高い利率は、何らかのリスクを引き受けた対価として支払われています。 詳しく見る →の第三の系統が、企業や国の「信用リスク発行体が利子や元本を約束どおり支払えなくなるリスクです。債券投資の中心的なリスクで、格付けやスプレッドで値付けされます。」を参照するクレジット系仕組債です。代表格はCLN(クレジット・リンク債特定の企業の信用リスクを引き受ける代わりに、高めの利子を受け取る債券です。経済的にはCDSという保険の「売り手」に回る取引です。 詳しく見る →)とリパッケージ債(SBリパ・CBリパ)。株価参照型ほど個人向けの店頭には並びませんが、機関投資家生命保険会社・銀行・年金基金など、大量の資金を運用するプロの投資家のことです。債券市場の売買の大部分を占めます。や地域金融機関の運用では昔から定番の道具であり、富裕層向けの私募提案などで個人が出会う機会もあります。この記事では、仕組みとメリット、そして固有の注意点を解説します。
CLN——「保険の売り手」に回って上乗せを得る
CLN(クレジット・リンク・ノート)は、参照組織(特定の企業や国)に信用事由(破綻・支払不履行など)が起きなければ、高めのクーポン額面に対して毎年支払われる利子の割合です。債券の価格が変動しても、この率は変わりません。を受け取って満期償還満期を迎えて、額面のお金が投資家に払い戻されることです。される債券です。信用事由が起きると、元本は参照債務の回収価値まで毀損します。
経済的な中身は、CDS企業の破綻に備える保険のような金融取引(クレジット・デフォルト・スワップ)です。保険料は市場で値付けされ、信用リスクの体温計として使われます。 詳しく見る →(クレジット・デフォルト発行体が利子や元本を約束どおり支払えなくなること(債務不履行)です。債券投資で最も避けたい事態です。・スワップ金利や通貨のキャッシュフローを交換する取引です。リパッケージ債や為替ヘッジの裏側で使われています。)という「企業の破綻に対する保険」の売り手側に回ることです。保険料(CDSプレミアムオプションの権利の代金(保険料)のことです。仕組債の高い利率の源泉はこれです。文脈によっては「上乗せ幅」の意味でも使われます。)が上乗せクーポンの源泉になります。株価参照型仕組債がボラティリティ価格変動の激しさのことです。オプションの価値を決める最大の要素で、仕組債のクーポンの源泉でもあります。の売りだったのに対し(日経平均リンク債の記事参照)、CLNは信用リスクの売り——参照する対象が違うだけで、「めったに起きないことの保険を売って対価を得る」という骨格は同じです。
ただし、株価参照型と決定的に違う点が一つあります。信用リスクを取ること自体は、社債投資の本業そのものだということです。トヨタの社債を買うことと、トヨタを参照するCLNを買うことは、取っているリスクの種類としては同じです。だからこそ、この商品は次のようなまっとうな使い道を持ちます。
- 現物の社債が市場に出回っていない発行体債券を発行してお金を借りる企業・政府・機関のことです。債券投資は「発行体にお金を貸す」ことにあたります。の信用リスクを取れる(社債をほとんど発行しない優良企業など)。
- 年限・通貨・金額を注文に合わせて組める。現物の品揃えにない「あの会社の3年・円建て」が作れます。
- 市況によっては、同じ発行体の現物社債より高い利回りが取れる(CDS市場と現物市場の需給の差、いわゆるベーシスです)。
リパッケージ債(SBリパ・CBリパ)——既存の債券を「作り直す」
リパッケージ債は、既に発行されている普通社債(SB)や転換社債(CB)を特別目的会社特定の取引のためだけに設立される法人です。リパッケージ債やCLNの発行主体として使われます。 詳しく見る →(SPC)に入れ、スワップ取引でキャッシュフローお金の受け取り・支払いの流れのことです。債券なら、定期的な利子と満期の償還金がこれにあたります。を変換して、別の条件の債券として発行し直したものです。たとえば——
- 海外企業のドル建て社債を包み、通貨スワップをかけて円建て・固定利付の債券に変換する(SBリパの典型)。円投資家が為替リスクなしで海外発行体の信用スプレッド国債など基準となる金利への「上乗せ幅」のことです。発行体の信用リスクと流動性の対価で、社債の値段の本体といえます。 詳しく見る →だけを取れます。
- 転換社債(CB)から株式オプション「あらかじめ決めた価格で買える/売れる権利」を売買する取引です。権利の代金をプレミアムと呼びます。部分を切り離し、債券部分だけのシンプルな利付債に作り直す(CBリパ)。CBは株のおまけが付く分クーポンが低いのですが、おまけを外して売却した対価をクーポンに転換できます。
これは投機のための商品ではなく、「欲しい発行体の信用リスクを、欲しい通貨・年限・形式で持つ」ためのオーダーメイド技術です。機関投資家の私募市場では大量に流通しており、当サイトが扱ってきたサムライ債海外の発行体が日本国内で発行する円建て債券です。為替リスクを取らずに、海外発行体の信用力に投資できます。 詳しく見る →(解説記事)が果たす役割——為替リスクなしで海外発行体に投資する——を、発行体側ではなく投資家側の注文で実現する仕組みと言えます。
「社債並みに堅い」は言い過ぎか——実務経験者の評価
ここで、当サイトとしての評価をはっきり書いておきます。投資適格のシニア債弁済順位が標準的な(劣後しない)債券のことです。普通社債はこれにあたります。劣後債の対義語として使われます。務を参照する、円建てのプレーンなリパッケージ債やCLNは、実質的なリスクの中身が普通の社債投資とほとんど変わりません。株価参照型仕組債のような「めったに起きない暴落への賭け」も、為替系のような相場観へのレバレッジ自己資金より大きな金額を動かして、損益を増幅させることです。てこの原理にたとえられます。も含まれていない——見ているのは「この発行体が約束どおり支払うか」だけで、それは債券投資の本業そのものです。
この評価は机上の話ではありません。地域金融機関や生命保険会社といった、最も保守的な部類の機関投資家が、リパッケージ債やCLNを満期保有前提の運用として長年組み入れてきました。プロの世界では「仕組債」という括りで警戒される商品ではなく、品揃えの制約を超えるための実務的な道具として定着しています。
しかも、同じ信用リスクに対して現物の社債より高めの利回りが乗ることが多いのがこの商品の実利です。この上乗せの正体は、発行体の危険度ではなく「構造の複雑さと流動性売りたいときに、すぐ適正な価格で売れるかどうかの度合いです。流動性が低い銘柄ほど売買のコストが大きくなります。の低さに対するプレミアム」——つまり、SPCやスワップの仕組みを理解する手間と、満期まで持ち切る覚悟に対して支払われる対価です。構造を理解できる投資家にとっては、リスクを増やさずに利回りだけ上乗せする、数少ない合理的な機会と言えます。だからこそ当サイトは、仕組債の3系統のなかでクレジット系(のプレーンなもの)を最も前向きに評価しています。
もちろん「社債とほとんど同じ」の「ほとんど」の部分——次に挙げる固有の確認事項——を飛ばしてよいわけではありません。ここを確認して初めて、上のプレミアムを安心して受け取れます。
固有の注意点——リスクは「二重」で数える
- 信用リスクが二重にある。参照組織(またはSPCに入っている債券の発行体)に加えて、スワップの相手方(カウンターパーティ取引の相手方(の金融機関)のことです。相手が破綻すると取引自体が毀損するリスクを、カウンターパーティ・リスクと呼びます。)である金融機関のリスクも負っています。2008年のリーマン・ブラザーズ破綻では、参照企業は健在なのにスワップ相手の破綻でリパッケージ債が毀損する事例が実際に起きました。
- 信用事由の定義を読む。CLNの元本毀損を引き起こす「クレジットイベント」には、破綻だけでなく債務のリストラクチャリング(条件変更)が含まれることがあります。どこまでが引き金かは契約書の定義次第です。
- 流動性はほぼない。オーダーメイド商品の宿命として、中途売却は組成した金融機関との相対交渉になります。満期まで持ち切る前提の資金で買うものです。
まとめ——仕組債の中では「本業に最も近い」系統
クレジット系仕組債は、参照しているリスクが「信用」である分、債券投資家の本業の延長線上にあります。投資適格の発行体を参照する円建てのプレーンなものであれば、社債並みの堅さに複雑さプレミアム分の利回りが乗る——仕組債の3系統のなかで、当サイトが最も前向きに評価する系統です。判断の土台になる信用分析の方法は格付けの読み方や当サイトの発行体分析をご覧ください。逆に、参照組織とSPCとスワップ相手の三者関係を説明されて腑に落ちないうちは、まだ手を出す段階ではありません。仕組債全体の見取り図は仕組債ガイド、金利・為替系は別記事で解説しています。
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