EB債(他社株転換可能債特定の株式の値動きに応じて、満期に現金ではなく(下落した)株式で償還される可能性のある仕組債です。 詳しく見る →)とは、特定の株式の値動きに応じて、満期に現金ではなく「株式」で償還満期を迎えて、額面のお金が投資家に払い戻されることです。される可能性のある仕組債オプションなどのデリバティブを債券の形に組み込んだ商品です。高い利率は、何らかのリスクを引き受けた対価として支払われています。 詳しく見る →です。「◯◯株価連動・年率10%」といった条件で売り出され、参照される株式は発行体債券を発行してお金を借りる企業・政府・機関のことです。債券投資は「発行体にお金を貸す」ことにあたります。とは無関係の上場企業——だから「他社株」転換可能債と呼ばれます。この記事では、EB債がどう動く商品なのか、そして「株で返ってくる」ことの本当の意味を解説します。
基本の仕組み——現金で返るか、株で返るか
典型的なEB債の条件はこうです。参照銘柄の株価が期間中ノックイン仕組債で、参照する指数や株価が一定水準(例: 当初の65%)まで下がると、元本保護が外れる条件のことです。発動後の償還額は満期時の水準次第になります。 詳しく見る →水準(当初の70%前後)を下回らなければ、満期に額面債券の券面上の金額で、満期に払い戻される基準です。債券価格は「額面100あたり」で表されます。100%が現金で償還され、高いクーポン額面に対して毎年支払われる利子の割合です。債券の価格が変動しても、この率は変わりません。も受け取れます。しかしノックインが発生し、満期時の株価も当初水準を下回っていると、額面の現金ではなく、下落した参照株式そのもの(または株価に連動して減額された現金)で償還されます。
「株でもらえるなら、持っていればいつか戻るのでは」と考える方は多いのですが、ここに落とし穴があります。受け取るのは当初の高い株価を基準にした株数です。たとえば当初1,000円の株が満期に600円なら、手元に来るのは「1,000円で買ったのと同じ株数の、600円の株」——つまり4割の含み損を抱えた株式を、契約によって引き取らされるのと同じです。その後さらに下がるリスクも当然あります。
日経平均リンク債との違い——個別株の分だけ荒い
経済的な構造は日経平均リンク債と同族で、参照資産の下落リスクを引き受ける対価としてクーポンを受け取る形です。違いは参照先が指数ではなく個別株であること。個別株は指数より値動きが激しいため、同じノックイン水準でも到達する確率が高く、その分クーポンも高く提示されます。
実務上の経験則を一つ挙げると、EB債の参照銘柄には値動きの荒い人気株が選ばれやすいという傾向があります。これは偶然ではありません。ボラティリティ価格変動の激しさのことです。オプションの価値を決める最大の要素で、仕組債のクーポンの源泉でもあります。(変動の激しさ)が高い銘柄ほどオプション「あらかじめ決めた価格で買える/売れる権利」を売買する取引です。権利の代金をプレミアムと呼びます。の価値が高く、見栄えのするクーポンを組成できるからです。「よく知っている有名企業だから安心」という感覚と、「その銘柄が選ばれた理由は値動きの荒さ」という組成側の論理は、正反対を向いています。
「発行体」と「参照企業」は別物——二重の登場人物
EB債で混同されやすいのが登場人物の整理です。債券の発行体は、証券会社系の発行主体や海外の金融機関であって、参照される企業ではありません。参照企業はEB債の存在すら関知していないのが普通です。
- 参照株式のリスク:株価が下がれば株式で償還される——商品の主リスク。
- 発行体の信用リスク発行体が利子や元本を約束どおり支払えなくなるリスクです。債券投資の中心的なリスクで、格付けやスプレッドで値付けされます。:これとは別に、債券として発行体の支払能力のリスクも負っています。海外金融機関の破綻があれば、参照株が無事でも影響を受け得ます。
なお、EB債や日経平均リンク債は個人向けにはほとんどが円建てで組成されます(MTNプログラム金融機関があらかじめ登録した枠内で、機動的に債券を発行できる仕組みです。オーダーメイドの債券はこの枠から発行されます。による個別組成なら外貨建ても技術的には可能ですが、例外的です)。高クーポンに為替の上乗せまで付いている場合は、リスクが二階建てになっていないか条件をよく確認してください。
検討する前に
EB債の損益を一言に圧縮すると、「参照株が下がらなければクーポン、下がれば含み損付きの株」です。これは「その株を今の値段で買ってもよい」と思えるかどうかの判断に近く、実質的には債券投資ではなく個別株投資です。それなら株を直接買えば、上昇の利益は青天井で、いつでも売れて、コストも透明です——上昇を放棄してクーポンに置き換える対価が妥当かどうか、が問いになります。早期償還の仕組みはオートコールの記事、ノックインしてしまった後の考え方はノックイン後の記事で扱っています。
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