「ドルを持ちたい」と思ったとき、多くの人が最初に思い浮かべるのは銀行の外貨預金です。しかし、同じ「ドルを持って金利を受け取る」行為なら、証券会社で米国債を買うという選択肢があります。両者は似ているようで、利回り・税金・資産保護の3点で構造的な差があります。この記事では、その差を実務目線で比較します。
①利回り——預金金利は「銀行のマージン後」の数字
外貨預金の金利は、銀行が市場金利からマージンを差し引いて設定します。キャンペーン金利には期間限定の条件が付くことが多く、恒常的な水準は市場金利を下回るのが普通です。一方、米国債の利回りは市場そのもので、ドル金利の水準をほぼそのまま受け取れます(購入価格に含まれるスプレッド国債など基準となる金利への「上乗せ幅」のことです。発行体の信用リスクと流動性の対価で、社債の値段の本体といえます。 詳しく見る →については既発外債の買い方の記事参照)。満期まで保有すれば、購入時点の利回りが確定します。
②税金——為替差益の扱いが決定的に違う
ここが最も見落とされやすく、金額的にも大きな差になり得るポイントです。
- 外貨預金:利息は源泉分離課税20.315%ですが、為替差益は雑所得として総合課税です。給与などと合算されるため、所得の高い方では税率が20.315%を大きく超え得ます。原則として確定申告も必要です。
- 米国債(債券):利子・譲渡益・償還満期を迎えて、額面のお金が投資家に払い戻されることです。差益・それらに含まれる為替差損益まで、すべて申告分離課税給与などと合算せず、一律20.315%の税率で完結する課税方式です。債券の利子・売却益・償還差益はすべてこれに当たります。20.315%です。特定口座証券会社が損益の計算と納税(源泉徴収あり)を代行してくれる口座です。債券も株式と同じくこの口座で取引できます。(源泉徴収あり)なら申告も原則不要で、株式や投資信託との損益通算利益と損失を相殺して課税額を減らすことです。債券の損益は、上場株式や投資信託の損益と相殺できます。・損失の繰越控除も使えます。
円安局面で大きな為替差益が出た場合、外貨預金では総合課税の高い税率がそのまま乗るのに対し、債券では一律20.315%で完結します。「同じ円安の利益なのに、器によって手取りが変わる」——これは商品性というより税制の構造差です。
③資産保護——外貨預金はペイオフの対象外
意外に知られていませんが、外貨預金は預金保険(ペイオフ)の対象外です。銀行が破綻した場合、円預金のような1,000万円までの保護がありません。一方、証券会社で保有する債券は分別管理の対象で、証券会社の資産とは切り離して保管されます。証券会社が破綻しても債券そのものは投資家に返還されるのが原則で、万一の不足時には投資者保護基金(1,000万円まで)が補完します。
比較表——構造の差をまとめる
| 外貨預金 | 米国債 | |
|---|---|---|
| 利回り | 銀行設定(マージン後) | 市場金利をほぼ直接享受 |
| 為替差益の課税 | 雑所得・総合課税 | 申告分離20.315%に内包 |
| 特定口座・損益通算 | 不可 | 可能 |
| 破綻時の保護 | 預金保険の対象外 | 分別管理+投資者保護基金 |
| 中途換金 | いつでも(レート次第) | 時価売却(価格変動あり) |
| 手軽さ | 銀行口座だけで完結 | 証券口座の開設が必要 |
外貨預金が向くケースもある
公平のために書いておくと、近い将来に使う予定のある外貨(留学費用・海外送金の待機資金など)は、価格変動のない外貨預金の方が適しています。米国債は中途売却時に価格が動くため、「使う時期が決まっているなら満期をそこに合わせる」のが原則です(残存年数の選び方は米国債の記事参照)。
そして、どちらを選んでも円高になれば円ベースでは損をする点は共通です。器の優劣の前に、そもそもいくら外貨建て資産を持つか——この順序で考えたい方は為替リスクの記事からお読みください。証券口座をこれから用意する方は証券会社の比較記事もどうぞ。
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