証券会社の既発外債リストには、米国債に混じってドル建ての社債が並んでいます。世界的な大企業の名前が多く、利回りは同じ残存の米国債より高め——では、その「高め」の部分をどう評価すればよいのでしょうか。この記事では、機関投資家生命保険会社・銀行・年金基金など、大量の資金を運用するプロの投資家のことです。債券市場の売買の大部分を占めます。がドル建て社債を見るときの物差しである「スプレッド国債など基準となる金利への「上乗せ幅」のことです。発行体の信用リスクと流動性の対価で、社債の値段の本体といえます。 詳しく見る →」の考え方を、個人投資家向けに翻訳します。
利回りは「米国債+スプレッド」に分解して読む
プロの債券市場では、社債の利回りを絶対値では見ません。「同じ残存年数の米国債利回りに、何%上乗せされているか」——この上乗せ分をスプレッドと呼び、これが社債の値段の本体です。スプレッドは、発行体債券を発行してお金を借りる企業・政府・機関のことです。債券投資は「発行体にお金を貸す」ことにあたります。の信用リスク発行体が利子や元本を約束どおり支払えなくなるリスクです。債券投資の中心的なリスクで、格付けやスプレッドで値付けされます。と、売りたいときに売りにくい流動性売りたいときに、すぐ適正な価格で売れるかどうかの度合いです。流動性が低い銘柄ほど売買のコストが大きくなります。リスクへの対価です。
個人の実務でも、この見方はそのまま使えます。証券会社の画面で気になる社債を見つけたら、同じくらいの残存年数の米国債の利回りとの差(スプレッド)を見ます。その物差しになる米国債利回りは、外貨建て債券ガイドに当サイトが残存ゾーン別(2年/5年/10年/20年/30年)で毎営業日自動集計して掲載しています。たとえば残存5年のドル建て社債の利回りから表の「5年前後」を引けば、それがスプレッドです。上乗せが0.5%しかないのに知名度だけで選んでいないか、逆に2%も上乗せがあるならその理由(格付けR&IやJCRなどの第三者機関が、発行体の「約束どおり支払う力」を記号で評価したものです。AAAが最上位で、個人向け社債はA格前後が中心です。 詳しく見る →・業種・劣後性)は何か——引き算一つで、検討の質が変わります。格付けとスプレッドの関係は格付けの解説記事が土台になります。
個人が出会うドル建て社債の顔ぶれ
既発のドル建て社債として個人向けに流通しやすいのは、おおむね次の2系統です。
- 米国や欧州のグローバル企業の債券:IT・金融・消費財などの大型発行体。発行額が大きく流動性も相対的に高い層です。
- 日本企業・邦銀が海外市場で発行したドル債:メガバンクグループが海外で発行するシニア債弁済順位が標準的な(劣後しない)債券のことです。普通社債はこれにあたります。劣後債の対義語として使われます。などが既発で並ぶことがあります。「日本の名前」の安心感で選ばれがちですが、円建ての国内債とは発行体の所在(持株会社か銀行本体か)や弁済順位が異なる場合があるため、名前ではなく目論見書債券の発行条件やリスクを記載した法定の開示書類です。購入前に必ず交付されます。 詳しく見る →・商品説明の条項で確認する必要があります。
購入前に確認する3つの条項
- スプレッドの妥当性:前述の引き算です。同格付け・同年限の他の銘柄とも比べると、割高・割安の感覚がつかめます。
- 期限前償還満期より前に、発行体が債券を額面などで償還できる条項のことです。劣後債では「最初のコール日に償還するのが慣行」ですが、義務ではありません。 詳しく見る →(コール)条項の有無:米国の社債には、満期前に発行体が償還満期を迎えて、額面のお金が投資家に払い戻されることです。できる条項が付いているものがあります。金利が下がると償還されやすく、想定した利回りを最後まで享受できない可能性があります。コール条項の考え方は劣後債のコールの記事で詳しく解説しています。
- シニアか劣後か:同じ発行体でも、劣後債発行体が破綻したとき、弁済の順位が普通の債券より後回しになる債券です。その分だけ利回りが高く設定されます。 詳しく見る →やハイブリッド証券は弁済順位が下がる分だけ利回りが高くなります。利回りの高さが「劣後性の対価」なのか「信用力の低さの対価」なのかは、性質がまったく違います(ハイブリッド債の解説記事参照)。
米国債・SSA債との位置づけ比較
| 米国債 | SSA債(国際機関債) | ドル建て社債 | |
|---|---|---|---|
| 利回りの源泉 | ドル金利 | ドル金利+ごく薄い上乗せ | ドル金利+信用スプレッド |
| 信用リスク | 米国政府 | ほぼ最上位 | 発行体ごとに異なる(要分析) |
| 個人向けの流通量 | 非常に多い | 新発売出が中心 | 銘柄・時期による |
スプレッド分析は、当サイトが円建ての個人向け社債で行っている発行体分析と地続きです。ドル建て社債は「米国債より高い利回り」という見た目から入るのではなく、「この発行体の信用リスクに、この上乗せは見合うか」という順序で検討してください。単価額面100あたりの債券価格です。98なら額面より2%安く買える状態(アンダーパー)です。・経過利子利払日の間に既発債を買うとき、前回利払日からの日数分の利子を売り手に支払う精算金です。次の利払日に全額受け取れるので、損でも得でもありません。 詳しく見る →など購入の実務は既発外債の買い方の記事、米国債そのものの選び方は米国債の記事をご覧ください。
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