外債の「売出すでに発行された債券を、証券会社が均一の条件で多数の投資家に販売する形式です。外貨建て債券の多くはこの形式で販売されます。 詳しく見る →(うりだし)」とは、海外で発行された債券を、国内の証券会社が均一の条件で投資家に販売する形式のことです。個人が米ドル建ての世界銀行債や米国債を買うとき、その多くはこの「売出」という枠組みを通っています。
当サイトでこれまで扱ってきた個人向け社債(円建ての国内債)は、発行体債券を発行してお金を借りる企業・政府・機関のことです。債券投資は「発行体にお金を貸す」ことにあたります。が国内で新規に発行する「募集」という形式でした。一方、外貨建て債券の世界では「売出」が主役になります。この記事では、売出という仕組みの意味と、個人が実際に出会う外債の2つの類型——新発の国際機関債世界銀行やアジア開発銀行などの国際機関・政府系機関の債券の総称(Sovereign/Supranational/Agency)です。信用力は最上位クラスで、外貨建て売出の定番です。 詳しく見る →(SSA債)と既発の米国債・ドル建て社債——を整理します。あわせて、外債ではないものの同じ「売出債」の棚に並ぶ仕組債オプションなどのデリバティブを債券の形に組み込んだ商品です。高い利率は、何らかのリスクを引き受けた対価として支払われています。 詳しく見る →についても注意点に触れます。
「募集」と「売出」の違い
金融商品取引法の整理では、「募集」は新たに発行される有価証券の取得の勧誘、「売出」はすでに発行された有価証券を、均一の条件で多数(50名以上)の投資家に売り付ける勧誘を指します。
外貨建て債券の場合、債券そのものはロンドンやニューヨークなどの海外市場で発行されます。国内の証券会社はその債券を仕入れ、国内の投資家に「単価額面100あたりの債券価格です。98なら額面より2%安く買える状態(アンダーパー)です。いくら・利回り何%」という均一条件で販売します。これが外債の売出です。投資家から見た実務上のポイントは2つです。
- 「新発」でも形式は売出になることが多い。証券会社のサイトで「新発外国債券」として案内されている世銀債なども、法律上は海外発行済み債券の売出(または売出に準じた取扱い)です。申込期間中は条件が均一なので、個人向け社債の募集と同じ感覚で申し込めます。
- 「既発」の売出は、株の店頭取引に近い。証券会社が在庫として持っている既発行の債券を、その時々の市場実勢に基づく単価で販売します。単価は日々変わり、販売価格には証券会社の収益(スプレッド国債など基準となる金利への「上乗せ幅」のことです。発行体の信用リスクと流動性の対価で、社債の値段の本体といえます。 詳しく見る →)が含まれます。
類型①:新発のSSA債(国際機関債)——毎月のように売出がある定番
個人向けの新発外債で最も頻繁に登場するのが、SSAと呼ばれる発行体グループの債券です。SSAは Sovereign(国・政府)、Supranational(国際機関)、Agency(政府系機関)の頭文字で、機関投資家生命保険会社・銀行・年金基金など、大量の資金を運用するプロの投資家のことです。債券市場の売買の大部分を占めます。の債券市場では一大セクターを形成しています。
| 区分 | 代表的な発行体 | 特徴 |
|---|---|---|
| 国際機関(Supranational) | 世界銀行(IBRD)、国際金融公社(IFC)、アジア開発銀行(ADB)、米州開発銀行(IDB)、欧州復興開発銀行(EBRD) | 加盟国の出資に支えられ、多くが最上位のAAA格 |
| 政府系機関(Agency) | ドイツ復興金融公庫(KfW)、ドイツ農業金融公庫(Rentenbank)など | 実質的に政府の信用力を背景とする |
| 国・政府(Sovereign) | 米国債をはじめ各国国債 | その国の信用力そのもの |
大手証券やネット証券では、米ドル建てや豪ドル建てのSSA債の売出がほぼ毎月のように行われています。世界銀行のサステナブル・ディベロップメント・ボンドや、環境案件に使途を限定したグリーンボンドなど、テーマ性を持たせた債券が個人向けの定番です。ときには世界銀行がインドネシアルピアなど新興国通貨建てで発行するケースもあり、この場合は高い表面利率額面に対して毎年支払われる利子の割合です。債券の価格が変動しても、この率は変わりません。の代わりに大きな為替リスクを取ることになります。
プロの目線で言えば、SSA債の信用リスク発行体が利子や元本を約束どおり支払えなくなるリスクです。債券投資の中心的なリスクで、格付けやスプレッドで値付けされます。は実質的に「ほぼ考えなくてよい」水準です。世界銀行やADBは主要国の出資と優先弁済上の特別な地位に支えられており、機関投資家の世界でも国債に準じる扱い(ソブリン国・政府(の信用力)を指す言葉です。ソブリン債といえば国債のことです。・スプレッド+わずかな上乗せ)で取引されます。つまり、個人がSSA債を買うときに検討すべきリスクは、信用ではなく「為替」と「金利(債券価格の変動)」の2つに絞られます。格付けR&IやJCRなどの第三者機関が、発行体の「約束どおり支払う力」を記号で評価したものです。AAAが最上位で、個人向け社債はA格前後が中心です。 詳しく見る →の読み方は格付けの解説記事を、金利変動と価格の関係はデュレーションの解説記事をご覧ください。
類型②:既発の米国債・ドル建て社債——在庫から選ぶ買い方
新発の売出を待たなくても、証券会社は既発の外債在庫を常時販売しています。中心は米国債(利付債とストリップス債利子の支払いがなく、額面より大幅に安い価格で買って満期に額面を受け取る債券です。複利運用が商品に内蔵されており、値動きは大きめです。 詳しく見る →)で、ネット証券なら画面上に残存年数別の一覧が並び、数十から百銘柄超の中から選べます。AppleやAlphabetといった米国企業のドル建て社債が並ぶこともあります。
既発債すでに発行され、市場で流通している債券です。証券会社の在庫から、募集を待たずにいつでも購入できます。 詳しく見る →には、新発にはない特有の実務があります。単価(アンダーパー額面(100)より安い価格で取引されている状態です。満期には100で償還されるため、値上がり分(償還差益)が利益になります。・オーバーパー額面(100)より高い価格で取引されている状態です。高い利子を受け取れる代わりに、償還時には差損が出ます。最終利回りは両方を織り込んで計算されます。)の見方、経過利子利払日の間に既発債を買うとき、前回利払日からの日数分の利子を売り手に支払う精算金です。次の利払日に全額受け取れるので、損でも得でもありません。 詳しく見る →の精算、販売価格に含まれるスプレッド、為替手数料——このあたりを理解しているかどうかで、実質的な利回りは目に見えて変わります。詳しくは既発外債の買い方の記事で、実務目線で丁寧に解説しています。
番外:仕組債——同じ「売出債」の棚に並ぶ、外債ではない別物
証券会社の売出債のラインナップには、日経平均などに連動する「仕組債」が並んでいることがあります。まず正確に区別しておくと、日経平均リンク債やEB債特定の株式の値動きに応じて、満期に現金ではなく(下落した)株式で償還される可能性のある仕組債です。 詳しく見る →の多くは円建てで組成されており、外貨建て債券ではありません(MTNプログラム金融機関があらかじめ登録した枠内で、機動的に債券を発行できる仕組みです。オーダーメイドの債券はこの枠から発行されます。で個別に組成する場合は外貨建てにもできますが、個人向け売出では例外的です)。それでもここで触れるのは、外債と同じ「売出債」の棚に並んで販売されるからです。形式上は同じ「債券の売出」ですが、経済的な中身は普通の債券とはまったく別物です。高いクーポンの正体はオプション「あらかじめ決めた価格で買える/売れる権利」を売買する取引です。権利の代金をプレミアムと呼びます。の売却代金であり、株価が大きく下がると元本が株価連動で毀損します。2022年には金融庁が販売体制を問題視し、大手証券が個人向け販売を相次いで停止した経緯もあります。
「売出債=安全な債券」と思い込んでいると、この類型で思わぬリスクを取ることになります。構造の分解は日経平均リンク債の解説記事で行っていますので、外債コーナーで高利回りの商品を見かけたら、申し込む前に必ずご一読ください。
円建ての個人向け社債との使い分け
| 個人向け社債(円建て) | 外貨建てSSA債・米国債 | |
|---|---|---|
| 形式 | 募集(国内発行) | 売出(海外発行) |
| 為替リスク | なし | あり(損益の主因) |
| 信用リスク | 発行体による(A格前後が中心) | SSA・米国債はほぼ最上位 |
| 利回りの源泉 | 円金利+信用スプレッド | 外貨金利(為替で変動) |
| 発行頻度 | 不定期(年数十本) | 新発売出はほぼ毎月+既発は常時 |
ちなみに「円建てだが発行体は海外」という中間形態がサムライ債海外の発行体が日本国内で発行する円建て債券です。為替リスクを取らずに、海外発行体の信用力に投資できます。 詳しく見る →です(サムライ債の解説記事)。為替リスクを取らずに海外発行体の信用スプレッドを取りに行く商品で、外債と国内社債のちょうど中間に位置します。
まとめ
- 外債は「売出」形式で販売されます。新発のSSA債は毎月のように登場し、既発の米国債などは常時買えます。
- SSA債・米国債の検討ポイントは信用ではなく為替と金利です。円高が進めば外貨ベースの利回りは簡単に打ち消されます。
- 同じ売出債コーナーに並ぶ仕組債は経済的に別物です(多くは円建てで、そもそも外債でもありません)。高いクーポンには必ず対価があります。
新しい募集が公表された日・利率が決まった日・募集が始まった日の3回、条件の要点(利率・年限・格付け・募集期間・取扱証券会社)をメールで届けます。人気銘柄は初日に売り切れるので、募集開始の前に備えられます。配信は月に数回。いつでも解除できます。
確認メールをお送りします。メール内のリンクを開くと登録が完了します。



コメント